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コロナ禍の憲法 3つの提案

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緊急事態には人権保障がもろくなる。

 実際このコロナ禍で、政党や政治家から聞こえてくるのは、「緊急事態宣言出せ」「もっと早く出せ」の声ばかり。その宣言によって、いかに法の支配が掘り崩され、人権保障が空洞化しているか、そのことについての懸念の声は限りなく小さい。

そこで、今日の憲法審査会では、「コロナ禍の憲法」について問題提起しました。

以下は、自由討議のために準備したメモです。
このメモをもとにした実際の発言については、次の動画の冒頭5分を見て頂ければ幸いです。

●コロナ禍は、日本社会の法の支配の脆弱性をあらわにした。
緊急事態宣言や重点措置は、法の発動要件該当性をファクトと科学で判断するのではなく、指導者の匙加減で行われている。
しかもその匙加減は、確固たる意志にもとづかず、むしろ場当たり的に空気に左右される。空気に左右される人の支配は、意志に基づく人の支配と同等、あるいはそれ以上に法の支配の脅威である。

●コロナ禍を契機に法の支配を再構築するため
⓵コロナ禍進行中の今こそ、この憲法審査会で、コロナという緊急事態と人権について日本社会の課題を洗い出し国際社会の動向も調査を進めること

⓶その調査に基づき、平時といえる程度に落ち着いたらコロナ特措法改正と緊急事態条項について検討を進めること

⓷あわせて緊急事態の人権侵害の是正措置としても極めて有効な憲法裁判所の議論も進めることを今日は提起します。

●空気に左右される人の支配、それに基づくさまざまな措置は、実は憲法上のさまざまな疑義をよんでいます。
たとえば慶応大大学院の横大道聡教授は、まん延防止措置は違憲の疑いが強いと評価しています(神奈川新聞4月8日)。

 第一に、感染拡大防止という目的は合憲であっても、一律午後8時までという時短営業制限や一律同じ協力金という制約軽減策は手段としての合理性を欠くのではないか、そうであれば憲法22条1項の営業の自由を侵害する憲法違反があるのではないかという論点です。

 第二に、まん延防止措置の具体的な発動要件が政令に丸投げされている点で、国民の権利を制限するルールは「法律」で定めるとした憲法41条に違反するのではないか、という論点です。

 横大道教授は「危機に対応した法整備をパッケージで議論しておく時間的余裕はいくらでもあった。それにもかかわらず、その場しのぎの対応でやり過ごしてきた。サボってきたと言ってもいい」と指摘しており、この指摘は国会議員に向けられていると私たちは自覚すべきです。

 国民民主党は、国民から生業を奪うような重たい制約をかけるのに、あまりにも民主的統制に欠け、補償も不十分であるという理由で特措法に反対しました。

 改めてこの特措法とその運用に憲法違反の疑いはないかチェックし、今後の法整備に向けて土台を整えること、これは今憲法審査会に求められる最大の仕事のはずです。

●そして憲法上の疑義に対して、司法的判断・救済のルートも極めて脆弱です。
フランスの行政裁判所(コンセイユ・デタ)は、2020年にコロナ関連で840件の判決を出しており、前年比で6倍という報告があります。
デモの人数制限や無断の体温測定について違憲とか違法という判断がなされ、速やかにその司法判断に沿って政令が改廃されるなど動的な動きがあります。

緊急事態に100点の人権保障は難しい。
必要なのは、緊急事態には人権は過度の制約にさらされやすいという前提にきちんとたって、PDCAのサイクルをきちんと回すことです。

事前に緊急事態の手続要件・実体要件についてしっかり憲法や法律で枠づけし、違憲違法の疑いがあったら司法がチェックし、違憲違法だと判断されたら政府や国会は是正する。こうした動的な体制をつくることです。

 日本では、現在コロナ禍の違憲訴訟は報道ベースで1件だけ。
特定の飲食店に向けた時短命令措置について違憲違法の訴えです。

 特措法の憲法適合性自体も問題になっており、この国会で、コロナ禍における人権と公共の福祉のぎりぎりの調整がどこまでなされたのかも検証されるでしょう。

 その上で、日本の憲法裁判のハードルが高すぎるという問題を解決した方がよい。個人の具体的権利侵害があった場合にしか司法審査しか受けられない制度を改善して、抽象的司法審査を可能にする制度設計、いわゆる憲法裁判所を検討すべきです。

司法審査がありうるということは、行政側の緊張感を生み、その緊張感は必ず人権保障に資するはずです。

 実際、内閣官房は緊張感を持ったようで、4月9日東京都等に対して「要請・命令に際しての適切な判断のあり方について」という事務連絡通知を出しています。

要するに、措置法に基づいて個別の事業者に命令だすときは
⓵『特に必要があると認められる』との評価について合理的説明ができるのか
⓶公正性の観点からも説明ができるのか検討しろ、
とわざわざ新しくペーパーをだしたわけです。

 つまり、命令は、「本当にその命令が必要なんです!狙い撃ちじゃないんです!」と、万が一訴訟になっても耐えられる説明ができる場合に限って出して下さいよ、という紙だと理解しました。

 やり過ぎたら裁判で説明求められる、場合によっては違憲無効になる、という制度設計は権力の過度の人権侵害を抑止する作用があることの証左。憲法裁判所の議論も前に進めていきましょう。

そこで、もう一度、「コロナ禍の憲法」問題として今やるべき3つの提案

⓵コロナ禍進行中の今こそ、憲法審査会で、コロナという緊急事態と人権について日本社会の課題を洗い出し国際社会の動向も調査を進めること

⓶その調査に基づき、平時といえる程度に落ち着いたらコロナ特措法改正と緊急事態条項について検討を進めること

⓷あわせて緊急事態の人権侵害の是正措置としても極めて有効な憲法裁判所の議論を進めること

お読みいただき、ありがとうございました。


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