コロナ無法に慣らされないで。
海外からの帰国者が
①公共交通機関の不使用
②14日間の自宅等待機を「罰則をもって要請されてる件」(☚語義矛盾)
について調べてみました。本当だったら「法律による行政」の逸脱。そして逸脱してました。法治国家なら、早く国会開会して法改正しないとだいかんよ!
まず、厚労省に聞いてみたところ、「要請」がされていることは間違いない。そして、それが「法的根拠のない事実上の要請」である点も間違いない。つまり現在、海外からの帰国者は、空港で抗原検査を受け、その結果が陰性であっても、公共交通機関を使わずに空港から自腹で移動して、14日間家やホテルに閉じこもっていてください、とお願いされています。
ここでまず問題。法的根拠なく移動の自由を安易に制約してよいのか。本当にこの措置が必要ならば、せめて「要請」に法的根拠を与える、あるいは「指示」に格上げしなければならないのではないか。要請だとあくまで最終判断は各人だし、断られたらそれまで。「いや、ハイヤー代16000円も出せませんし、出してくれないんでしょ?だったら私は電車で帰りますよ。仕事も休めないんで、明日から普通に生活します。では!」と空港から去っていっても、行政には何もできません。ましてや、法律の根拠のない要請であれば、「なんの根拠に基づいて、親でもないのに私の生活に介入してくるんですか?」と尋ねられたら、答えに窮するでしょう。もし本当に公共交通機関の不使用と14日間の待機が必要だと判断するのであれば、検疫法を改正すべきだと思います。。
このように今の検疫法では、要請の法的根拠がないわけですが、にもかかわらず「罰則をもって要請」(☚本当に語義矛盾)されているとしたら、これは法律による行政に反し許されません。そこで現状を確認しました。
まず、帰国者は空港で「申告書」という紙と「質問票」という紙に記入を促されます。
「申告書」について。添付の写真を見てみてください。
このとおり、①公共交通機関の不使用と②14日間の自宅等待機を約束する言葉が印刷されているペーパーに署名することをもって、自ら申告したことになります。そして、その下部にはさらに「虚偽の申告をした方は、検疫法36条の規定により罰せられることがあります(6か月以下の懲役または50万円以下の罰金)」と記載されていますが、これは怖い。事実上勝手に約束させられた上で、これを破ったら裁判になったり罰金払わされたり刑務所に入れられたり、大変なことになるんだ・・・という印象を持つ人もいるでしょう。
しかし、結論からいうと、検疫法36条(3項)は「第12条の規定による質問に対し、答弁をせず、又は虚偽の答弁をした者」に対する罰則。すなわち「質問に対する虚偽答弁と答弁拒否」を対象にする罰則なので、「虚偽申告」は対象外。すなわち、この「申告書」は、「法律上罰則がないのにもかかわらず、罰則があるよと言って国民を脅し、行動制限をしている書面」ということになります。即刻、この罰則告知の記載は削除されなければなりません。
もうひとつ、「質問票」もあります。次の写真を見てください
この右下には、黒囲いで、「A自宅」「Bその他( )」を選択する欄、及び「C公共交通機関の使用なし」を選択する欄があります。そして、ここにも「虚偽の申告をした方は、検疫法第36条の規定により罰せられることがあります」の威嚇。
たしかに、この紙の名前は「質問票」です。そして質問に対する虚偽答弁には36条3項で罰則がかかるのもそのとおり。
しかし!
この紙には、そもそもこの2つの事項について質問が書かれていないのです。別の事項、すなわち「過去14日以内に、下記の流行地域に滞在していましたか?」とか「過去14日以内に、発熱やせきなどの症状がある人との接触がありましたか。」などは、質問内容が明確に記載されていて、回答欄も「はい・いいえ」と区別されている。何を聞かれているのかがはっきりしているので、事実に基づいて答えることができる。ここに、嘘を書いたら罰則の対象になるのは分かる。
でも、この右下の記載欄には、そもそも質問が書かれていない。「今後14日間は自宅やホテルなどで待機をし、外出をしないでほしいです。この要請に応じて頂けますか」とか「待機場所への移動には公共交通機関の使用をしないでほしいです。この要請に応じて頂けますか」という質問が全くない。質問がないのに、答える欄だけがある。しかも、その答えの欄には「はい・いいえ」の選択肢がない。それをすっとばして、「自宅かその他に待機する」「公共交通機関の使用なし」という意思表示しかできない記載欄になっている。つまり「いいえ」の選択肢がない。これ、「質問」と「答弁」になってない。実質どころか形式的にも該当しない。
「質問」は書かれておらず、しかも応じる回答欄しかないから、何を聞かれているのか分からない上、自由な「答弁」の機会を奪われてますよね。虚偽答弁が罰せられるのは、あくまで意志に基づいて真実を答える機会があるにもかかわらず、あえて虚偽の答えをしたから罰せられるんですよね。真実を答える機会を奪っておきながら、虚偽答弁を罰するのはおかしい。そもそも罰すべき必要があるなら、法律に公共交通機関の不使用や14日間の自宅待機の義務付け規定を作り、その規定をあえて破った場合に罰則を検討するというのが順番でしょう。でも、義務付け規定がない現状で、無理やり「守ります」という答弁を強制し、破ったら虚偽答弁で処罰するぞと威嚇するのは、どう考えても法律による行政を逸脱している。こちらも、即刻やめてもらわなければなりません。
やはり、無症状感染者や軽症感染者の感染力をコントロールする必要が高い点で、新型コロナは従来のウイルスと相当異なる性質があり、この性質を踏まえた行動変容を社会的にコントロールしなければいけない点で、従来の法律ではまかなえない無理がある。その無理を、現場が運用で必死に乗り越えようとするから、無法状態になる。これは、現場行政の責任ではなく、怠惰な立法者の責任だと思います。
だからこそ、臨時国会を開いて、新型コロナの性質をふまえた「法による必要最小限の行動制約とそれに伴う補償の制度」を早く議論し作らなきゃいけない。特措法、感染症法、検疫法など、できるところからスピーディーに。
憲法の臨時国会開催要件は、「いずれのかの議員の総議員の4分の1以上の要求」だけであって、「議論すべき法案の有無に関する国対委員長の認識」は要件ではない。森山国対委員長には毅然と主張してほしい。閉会中審査の継続でお茶を濁しあってたら、迫力も立憲主義もなんもないよ。
そして野党側から「まずはコロナ対策に集中した実務的な法改正を最優先させる。GOTOキャンペーンやアベノマスクなど政府のコロナ対策の課題検証はその後でやろう。」と提案すべきだ。憲法に基づくだけじゃなく、国民に対する説得力も増して、与党からも賛成の声があがるんじゃないかな。